第2部 礼典諸式 第18節 前夜式(通夜式) 前夜式は葬式の前の夜に行う式であるが、場合によっては永眠の夜または火葬の前夜に行ってもよく、あるいは納棺式を兼ねて行ってもよい。この式は通夜式またはお通夜とも言い、近親者、親しい友人、知人たちが集まる時であるから、ただ単に式を行うだけでなく、司式者は関係者たちに時を与えて故人をしのぶ会とし、追憶、感想をその立場から語り合って、故人を中心とした有益な集いとすべきである。このことは遺族や友人にとっても大いなる慰めとなるものであるが、家人の疲れている時でもあるから、10時前に閉会するよう心がけるべきである。 前夜式順序 賛美 聖歌 640「いつかは『さらば』と」 同 641「わがつみのために」 同 638「やがて天にて」 (この他、故人の愛唱歌) 聖書 詩篇116篇、あるいは次の詩篇39篇のいずれかを用いる。 1 私は言った。私は自分の道に気をつけよう。私が舌で罪を犯さないために。私の口に口輪をはめておこう。悪者が私の前にいる間は。 2 私はひたすら沈黙を守った。よいことにさえ、黙っていた。それで私の痛みは激しくなった。 3 私の心は私のうちで熱くなり、私がうめく間に、火は燃え上がった。そこで私は自分の舌で、こう言った。 4 主よ。お知らせください。私の終わり、私の齢が、どれだけなのか。私が、どんなに、はかないかを知ることができるように。 5 ご覧ください。あなたは私の日を手幅ほどにされました。私の一生は、あなたの前では、ないのも同然です。まことに、人はみな、盛んなときでも、全くむなしいものです。 6 まことに、人は幻のように歩き回り、まことに、彼らはむなしく立ち騒ぎます。人は、積みたくわえるが、だれがそれを集めるのかを知りません。 7 主よ。今、私は何を待ち望みましょう。私の望み、それはあなたです。 8 私のすべてのそむきの罪から私を助け出してください。私を愚か者のそしりとしないでください。 9 私は黙し、口を開きません。あなたが、そうなさったからです。 10 どうか、あなたのむちを私から取り除いてください。あなたの手に打たれて、私は衰え果てました。 11 あなたは、不義を責めて人を懲らしめ、その人の望むものを、しみが食うように、なくしてしまわれます。まことに、人はみな、むなしいものです。 12 私の祈りを聞いてください。主よ。私の叫びを耳に入れてください。私の涙に、黙っていないでください。私はあなたとともにいる旅人で、私のすべての先祖たちのように、寄留の者なのです。 13 私を見つめないでください。私が去って、いなくなる前に、私がほがらかになれるように。 (右のうち、九節の「口を開きません」とは、神に対して不平不満を申しませんとの意で、神のなされたことは何事でもそれが御旨であると信じて御前にもだし、心の奥で恩寵を味わって慰めを受けることである。詩篇71篇10-12節参考。) コリント人への手紙第二、5章1-8節 私たちの住まいである地上の幕屋がこわれても、神の下さる建物があることを、私たちは知っています。それは、人の手によらない、天にある永遠の家です。私たちはこの幕屋にあってうめき、この天から与えられる住まいを着たいと望んでいます。それを着たなら、私たちは裸の状態になることはないからです。確かにこの幕屋の中にいる間は、私たちは重荷を負って、うめいています。それは、この幕屋を脱ぎたいと思うからでなく、かえって天からの住まいを着たいからです。そのことによって、死ぬべきものがいのちにのまれてしまうためにです。私たちをこのことにかなう者としてくださった方は神です。神は、その保証として御霊を下さいました。そういうわけで、私たちはいつも心強いのです。ただし、私たちが肉体にいる間は、主から離れているということも知っています。確かに、私たちは見るところによってではなく、信仰によって歩んでいます。私たちはいつも心強いのです。そして、むしろ肉体を離れて、主のみもとにいるほうがよいと思っています。 祈祷 例1(篤信者のため) 聖にして恵み深い父なる神よ、私たちは今晩、信仰の戦いをよく戦い、走るべき道のりを走り、信仰を守ってこの世の旅路を終えられた兄弟(姉妹)をしのんで、ここに集まっています。私たちは今、御国に備えられた義の冠を望みつつ召された兄弟(姉妹)の遺族、近親の上に神の豊かな恵みと慰めとを切に祈ります。願わくは、主の深い御旨を謹んで承り、富かな恵みを思い、いのちのみことばによって慰めを与えてください。( )兄弟(姉妹)は、主の限りないご慈愛によって主イエスを知る者とされ、十字架のご宝血によって救われ、清められ、信仰の道をたどって、ついにみもとに召されました。今は、御前に仕える聖徒たちとともに栄光の主をほめたたえていることを信じて、御名をあがめます。 慈愛の父よ、この兄弟(姉妹)の召されたことによって、耐え難い悲しみと嘆きとのうちにある人々を顧み、その心に主の平安を授け、主による慰めを与えてください。またこの主の厳かな召しによって、人の世のはかなさを深く思い、まことの知恵を得させてくださるとともに、永遠に変ることのない主イエス・キリストを仰ぎ望み、ひたすら信仰の道に進むことを得させてください。特に主にありて眠った兄弟(姉妹)の信仰生活の良き模範にならって、その足跡を踏み、いよいよあつく主に仕えることを得させてください。 この兄弟(姉妹)と私たちとは、しばらく相見ることはできませんが、ともに神の恵みの中に置かれて、聖徒の交わりに連なる者とならせてください。このような悲しみの時にこそ、主の再臨の信仰による生きた希望のあることを思い、ご栄光の御前における栄化の恵みを堅く信じ、待ち望ませてください。 主イエスよ、速やかに来りたもうてご栄光を全地の上に現してください。私たちのために執り成してくださる主の御名によってお祈りいたします。 アーメン。 祈祷 例2(求道者のため) 聖にして恵み深い父なる御神よ、私たちは今晩、この世の旅路を終えて、見えない世界に行かれた兄弟(姉妹)の遺族および友人、知人とともに故人をしのびつつ、厳かな思いをもって御前に相集っています。願わくは、神の深い御旨を謹んで承り、豊かな恵みを思い、いのちのみことばによって尊い神の愛を知る者とならせてください。願わくは上よりの慰めを豊かに与えてください。 ( )兄弟(姉妹)を失って、耐え難い嘆きと悲しみとのうちにあるこの一家を顧みてください。願わくは、その心の中に神の愛を悟らせて、神の平安と慰めとを与えてください。またこの厳かなる事実によって、人の世のはかなさを深く思い、まことの知恵を得させてくださるとともに、永遠に変ることのない主イエス・キリストを仰ぎ望み、信仰の道にひたすら進むことを得させてください。私たちは、今晩、故人をしのぶことによって、今後の生活に深く教えられるところがありますように。主イエス・キリストの御名によってお祈りいたします。 アーメン。 賛美 聖歌 445「うき世の友」 感話(故人を語る追憶の会) 賛美 故人の愛唱歌 終祷(祝祷の項例2にある。)